かかびろぐ

大学3年生から書いてます

挨拶ができない

「君は感情を隠そうとして笑う癖があるね。」
入社から三週間経って人事に指摘された。

 

新入社員は五月半ばまで研修合宿を行い、その後は全国の支社に散らばっていく。だからこの1ヶ月半は知識や業務を覚えることはもとより、同期と仲良くなることも強く求められる。ただ、今のところ僕は若干居心地が悪い。別に同期と仲が悪いとか、お互いに避けているとかは全くない。むしろ関係性自体は一見良好である。

 

理由はわかっている。僕自身から同期に話しかけられないのだ。
僕は、同期がよく会話のネタにしている野球にもM-1にも筋トレにも興味がない。だから自分が興味ある話題を振ろうとしても、「きっと伝わらないだろう」と半ば諦めている。何より関西出身が多く、面白いことを言わなければいけない雰囲気が厭わしい。お酒の場も好きじゃないし、群れるのも嫌いだ。

仲良くなりたいという気持ちはあるものの、既に出来上がっている大きなグループでは全く興味のない話が繰り広げられている。そんな様子を横目に僕はスマホを眺め始める。

 

 

 

いや、嘘だ、そんなものは。
言い訳だ。保身なのだ。
所詮は自分が傷つかないようにしているだけ、俺は悪くないんだという詭弁だ。
自分が考えていること、感じていることを悟られたくなくて、1人で行動して、話しかけられたときは同調して笑顔の仮面を装着する。話しかけることさえ諦めているし、外出に誘ったこともないお前が何を言っている。俯瞰したような気になって、批評して、浅ましいな。

 

一人では生きていけないと分かっているが、一人で生きていたい。