未知のところに飛び込んでみたかった。文学に興味があった。大学在学中は随分とブックオフに世話になった。文系に進めばよかったのではと何度も考えた。
化学が好きだった。目に見えない小さな反応の集合体が目に見える形で現れるのは好奇心をくすぐった。化学を専攻したらよかったかもしれない、そんな未練もある。
突き進んでいたら自分に限界が見えた。だから他のところに発散していた。
そうこうしている間、浅いだけの知識が広がるうちに美術に関心を持った。今まで遊びとしか考えていなかった事柄が洗練されるとどのように美しく昇華されるのか。大学生活も終わりに近づいていた。焦りがあると同時に、絶対的なものに近づきたかった。確実なものを手に入れたかった。やれば全知全能にだってなれると心の奥底では本気で信じていた。
芸術はイデアと表象の唯一の接点だとショーペンハウアーは述べている。
「勉強って楽しいと感じたんですよね。」
自分が知りたいと思った気持ちを満たしてくれる場所に身を置くといい。