「どの道を選んでも必ず誰かを傷つけるからねえ」
建前と本心、選択による不可逆的な喪失に躊躇していたら言われた。しばらく前のことだが未だにふと思い出す。僕はどうしたらいいんですかね、ともう二度と会うことはない人に尋ねたときだった。
自分のやりたいことをしたら誰かに迷惑が及ぶ、傷つけてしまう。人間社会にいる限りこれは逃れられない。だからと言って負の環境が続いていくのも健全ではない。
「あなたの好きにしたらいいじゃん」「やめちゃえばいいじゃん」と無責任で無関係な甘言ばかりが目につく現代ではさらにそのバランスを見極めるのが難しい。唆されて思い切ったらお先真っ暗ですじゃあ笑いものだ。
何が言いたいというわけではないが、この発言が僕の中の「傷つけてしまう」を抑えていた頑なな呵責をいつの間にか退けていた。「どの道誰かに迷惑をかける」という感覚はあって良いのかもしれない。